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飛行機で空を飛ばす場合、東に向かう機は1000フィート単位の奇数高度、
西行きは1000フィートの偶数高度と決まっていた。
その決まりごとは民間機も自衛隊機でも同様の決まりごとだったはずだ。
もちろん、訓練生にとっては基本中の基本。
絶対に間違いを起こしてはならない決まりごとだった。
いま、忍は西へ飛行中だった。
高度は12000。
何度見直しても計器の針は12000を刺している。
「何処のバカだ、あれは。」
最初は丸い小さな点だったもの。が、確実に大きくなっている。
時速900キロだとして、相対速度は時速1800キロ。秒速で一秒間に500メートル。
「ち、しょうがねぇな。」
あと10秒、との所で忍はアフターバーナーを全開にさせた。
「!!」
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突然、暗闇の中で忍の身体が身じろいだ。
汗をかいたのか、湿った身体をいたわるようにシーツをかぶせる。
「きゃ、」
不意に手首をつかまれ、声をあげてしまった。
「あ、・・・あぁ、わりぃ」
「別にいいけど、大丈夫?凄い汗だよ?」
「ちと、夢見が悪かった、」
「へぇ、どんな夢さ?」
「・・・・・・話す事のものでもないさ。」
そう言って、忍はテーブルに転がっているペットボトルを手に取った。
「おこしちまったか?」
「あたしの横じゃ眠れないのかと思って、ムカついてたところさ。」
「バーカ、そんなんじゃねぇよ、」
知っていた。
きっと日頃の過密勤務のせいだと言う事は。
軍に戻ってからの忍は、身体に鞭を打つかのように長時間飛行していた。
「俺が死ぬならきっと空だろうな。」
前に忍が口にした言葉。
でも本当に危なくて、心配したときには、
「俺が空で死ぬわけ無いだろう?」
と答える。
きっとどちらも本音であって、事実、そうなるような予感もある。
失いたくない。
自分にとって、忍の隣にいる事が、いられる事が自分の場所だと思えるように、忍の帰る場所もあたしの隣であって欲しい。
でも、口には出来ない。
だからせめて、
「ほら、あたしが守ってあげるから」
シーツを持ち上げ、忍の場所を示す。
「ふ、なんだよそりゃ」
笑いながらも、沙羅の懐にもぐりこみ忍は目を閉じる。
すぐに寝息が聞こえてくるのは気のせいじゃないよね?
沙羅は優しく微笑むと忍を抱きかかえるように目を閉じた。
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